本当に男性は育休を取得した方がいいのか?
私は流行りに乗って育休を取得したのだろうか。ふと立ち止まって考えることがある。
同僚「男が育休取って何するの?」
私「育児です。」
もはや鉄板の男性育休あるあるのやり取りだが、
男性育休を1年間取得中の私も、これを経験した。
人によって考え方は様々だが、
「時代だね。」「流行りだね。」という知人(男性)からの揶揄に対して、
決して昨今の男性の育児参加に対する、ある種の「流行り」に乗ったわけではない、
ということを自分の言葉で説明できるようにしておきたく、
「本当に男性は育休を取得した方がいいのか?」という問いに今回は向き合ってみたい。
結論
先に触れておかなければいけないが、
私は育児休業を1年間取得し、現在子どもは生後3ヶ月を迎えたところだ。
すなわち、育休消化3ヶ月の状態で、この問いに答えることになる。
育児休業を「1年間」取得した方がよいか?には、まだ明確に答えることはできないが、
育休を取得した方がいいのか?に対しては、育休の期間に関わらず、答えは「はい、絶対に取った方がいい」だ。
これが理想論ではないことを、私が経験したリアルな現実を踏まえて説明する。
男性育休の「理想論」には限界がある
世間一般的によく言われる「男性が育休を取得する意味」は、次のようなものだ。
- パートナーを支えるため
- 育児に積極的に参加することで子どもとの絆を作るため
- 育休中に新しい視点や経験を取り入れ、仕事に生かすため
非常に弱い。
これらは正論で雰囲気は出るが、経験者からすると正直、上司や職場で説得力を持つかと言えば微妙だ。
男性が会社の上司に育休を取得したいと相談した際に、
なんで?と聞かれて、「新しい視点を取り入れ仕事に生かすためです。」と答えて、
すんなり「分かりました。」と本当になるだろうか。
上司が説得モードに入るなら、
「異動や昇進などで、新しい視点を取り入れてはどうか?」と言われるのがオチだ(私でもそう想像はする)。
「子どもとの絆のために、育児に積極的に参加したい。」と言っても、
上司が、「働きながらでも私はできた。」などと言おうものなら、
価値観の話なので、話は平行線にしかならない。
私「パートナーを支えるため。。。」
上司「ご実家は遠いの?(親の協力を得ればできるんじゃないか?)」
ここで言葉に詰まるようであれば、すぐに付け込まれる。
もちろん上司のリテラシーによる話だが、想定は必要だ。
これらを踏まえて、もう一度あの問いだ。
「本当に、男性は育休を取得した方がいいのか?」
はい、取得した方がいい。
それでも取るべき理由|「ワンオペ育児の過酷さ」は想像を超える
育児休業を取得して初めて実感する。
ワンオペ育児の想像を絶する過酷さ、その恐怖を。
その実態を順々に説明していく。
授乳サイクルに支配される生活
生後数ヶ月は3時間置きの授乳に合わせて生活が進んでいく。(詳しくはこちらの記事を参照)
授乳には、おむつ交換などを含めると正味1時間かかると思った方がいい。
授乳終わって残りの2時間は暇なのか?──違う。子どものお世話だ。
子どもが起きているなら、じっとしていることはない。
ほとんど泣いている。正確に言うと、目を離すと泣いてしまう。
すなわち、授乳以外の時間も子どもが見える範囲で生活しなければいけない。
「やっと寝た」時間でさえ気が休まらない
子どもが寝ているならと、放っておいていいことは無い。
吐き戻してないか、息をしているか、問題が起きていないか意識しなければいけない。
そんな時間にできることはなんだろう。
ソファに座ってテレビ見るかスマホいじるか本を読むか。
常に子どもに意識を向けながら。そんな時間が1時間あればいい方だ。
楽に感じるだろうか。
いや、これは経験するまで想像できないだろう。ほっと一息つける暇もない。
そして時間は溶けるように過ぎていく
そんな毎日を過ごすと、ふとこう考える。
「今日も1日何もできなかったな。」
「ご飯もろくに食べられなかったな。」
「これが毎日続くのか。」
そして次の朝、昨日とほぼ変わらないワンオペの1日を想像すると、
じわりと恐怖がにじんでくるのだ。
ワンオペ育児は例えるなら延々と続くシフト
私はこれまでの仕事経験に比較しても、
ワンオペ育児が精神的にも身体的にも過酷だと感じる。
育児を仕事に置き換えて考えてみよう。
それは例えるなら、休憩が無いことが分かっている警備員の仕事のようで、
それは例えるなら、何かが起きるかもしれない、何も起きないかもしれない夜勤のシフトのようで、
しかもその業務は、終わりを感じさせない、延々と続くシフトなのだ。
ツーオペ育児の本質は「心の余白」
ツーオペ育児は、単に人手が増えるということでは無い。
- ちょっと疲れたとき、代わってもらえる
- ご飯を食べる時間が取れる
- 数十分でも仮眠ができる
- トイレに行ける
- 相談できる、気持ちを共有できる
そんな「心の余白」を確保できることが、ツーオペの本質だ。
あなたはワンオペ育児のように仕事できますか?
仕事に置き換えてみてほしい。
あなたにしかできない、誰にも交代が頼めない、そんな仕事を会社は放置するだろうか?
あなたが管理職なら、特定の1人にしかできない基幹業務を、交代要員なしでまわさなければならない現状があった場合、どうするだろうか?
会社なら「リスク」として対策するはずだ。
だが、家庭では「ワンオペのリスク」は放置されがちだ。
ワンオペ育児は、仕事に置き換えれば「会社なら絶対に見過ごさない重大なリスク」なのだ。
では改めて。本当に男性は育休を取得した方がいいのか?
答えは、やはり「はい。取った方がいい」になる。
それは、ワンオペ育児というリスクを極力避けた方が良いからだ。
魔法の言葉「育児がしたいんです」
話は戻り、会社の上司に育休を取得したいと相談し、もし「なんで?」と聞かれたら、
「ワンオペ育児というリスクを避けたいから」と言っても、思うように伝わらないだろう。
ここはやはり、あなたの言葉で伝えるしかない。
ちなみに私の理由は、「育児がしたいんです」で、すんなり終わった。
今振り返っても、良かったのか悪かったのかわからない。
ただ、私が管理職として逆の立場だったとしたら、「なんで?」と聞き返せる気がしない。
そんなスキマが無いように思える。
それくらいシンプルで真っすぐな言葉が、意外と一番強いのかもしれない。
最後に|男性育休は流行りではなく、極めて自然な選択
男性育休のことを、昨今の「時代の流れ」や「流行」として片付けてはほしくない。
企業に持続可能な経営が求められるように、
家庭という組織を持続可能にするための、ごく自然で現実的な選択が男性育休だ。
このブログを読んで「育休取得しよう」と思ったのなら、その感覚を大事にしてほしい。
育児休業を実際に経験し、そう強く考える。
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